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Tout contre Léo (TV) 大好きなレオ兄さん

フランス映画 (2002)

一番慕っていた長兄が、HIVに感染したことを知ってしまった12才のナイーヴな少年の心の揺れを描いた作品。テレビ映画ではあるが、とてもそうは思えないほどしっかりと作られた作品だ。主演はヤニス・レスペール(Yaniss Lespert)。いかにもフランス人らしい男の子。

3人の大きな兄と、年の離れた12才の弟の4人兄弟の一家の話。長男のレオ(Pierre Mignard)は、パリでゲイ友と生活したためHIVに感染してしまう。家族会議の場でその事実が明かされる。しかし、子供だからと一人疎外されたマルセル(Yaniss Lespert)は、偶然話を聞いてしまい心を痛める。大好きな兄を失う恐れ、知らないことになっているため苦悩を家族と共有できない辛さが、マルセルに重くのしかかる。そして、レオと二人だけのパリ旅行。楽しみにしていた旅行先で見たレオの絶望、そして、一人故郷に返されるマルセルに向かってかけられるレオの精一杯の励ましの言葉。葬儀のシーンで映画は終わる。

ヤニス・レスペールは、役柄にぴったりの少年。辛そうな表情の多い中、女の子のような笑顔が可愛い。


あらすじ

全体に緊迫した感じの中で一家団らんの夕食が終わり、マルセルは寝る時間だと追いやられる。歯をみがき、お休みなさいと言うため階段を降りてくると、ひそひそ声が聞こえる。父:「マルセルには知らせるな、いいな?」。レオ:「なぜ。恥ずかしいから?」。母:「そういう問題じゃないの」。父:「理解するには、まだ小さい」。レオ:「死んでからでは、遅すぎる」。マルセルは衝撃を受けた。
  

しかし、知ってはならないことは、誰にも打ち明けられないし相談もできない。海岸で友達と4人で日光浴をしていると、そこにレオ兄さんが。皆が遠慮して最後は2人だけになる。兄の唇にとまった蜂を見て、「刺されるよ、どうしよう?」と心配するマルセル。レオは「飛んでくさ。いつもそう怖がるな」と諭す。兄のことが心配なマルセルと、死に直面して達観しているレオの違いがよく出ている。
  
  

マルセルは、父の写真店へ。そこでは三男のトリスタンがぎこちなく父の手伝いで接客中。わざと邪魔をするマルセル。兄に叱られた後で、「パパの店の奴隷じゃないか」と憎まれ口をたたく。「言うのは簡単だ。大きくなれば分かる」と兄。マルセルは「バカヤロ」と言って店を飛び出ると工事中のビルに忍び込み、置いてあった蛍光管を何本も柱に叩きつけて割る。
  

一家の夕食では、父が、「日曜にはフィルムが売れる。みんなが散歩やピクニックや浜辺に行くから」と言った後を引き継いで、次男が「乱行パーティー」もといい笑いを誘う。しかしその後で、マルセルがふざけて「乱行パーティー」と言うと、父親にひっぱたかれ出ていけと怒鳴られる。その夜、ベッドにやって来た父は、「12才の子は、乱行パーティーなんて言わん」「意味を知っとるのか? 意味を知らん言葉は使うな」と諭す。その後は、マルセルのひょうきんさに負けて父も笑い出すが、一歩外に出ると表情は急に暗くなる。一家に落ちた影はあまりにも大きい。
  

レオが、専門病院のあるブレストまで行く前日の夜、3人の兄は庭に集まり酒盛りだ。「俺の最後の夜だぞ。お祝いだ」とレオ。最後は、「歌って、笑って、そして泳ぎに行く」と深夜にもかかわらず海に行く。そっと後をつけるマルセル。海岸に座ってじっと3人の泳ぐ姿を恨めしげに見ている。3人が海から上がってくると、「なんで、入れてくれないのさ。誘ってもくれない」と不満をぶつけ、一人で海に入っていく。この深夜水泳のせいで寝坊したマルセル。泳いだせいでパジャマもない。シーツを巻きつけて降りて行くと、「何でシーツを巻いてるの? おねしょしたの?」と母。「みんなは」と訊き、「レオはパパと一緒」の返事にくどくどと質問して、母を怒らせてしまう。知りたいことも教えてもらえない境遇に、マルセルは頭にきて終日トイレに閉じこもる。
  
  

マルセルの抵抗に手を焼いた母は、友達イヴァンの母に頼み込んで預かってもらうことに。その夜、マルセルはイヴァンに「秘密 教えようか?」と言って、蛍光管を叩き壊したと打ち明ける。攻撃することの快感も。イヴァンは、僕もやりたいと言い出し、明くる日、鶏小屋に爆竹を投げ入れ、一羽殺してしまう。
  

そして、その夜、眠れないマルセルが水を飲みに台所に降りていくと、そこにイヴァンの母がいた。我慢しきれなくなり、マルセルは「レオが死んじゃう。エイズだって聞いちゃった。死ぬんだ」と打ち明ける。驚いた彼女だったが、「レオが死ぬなんて言わないの。人は皆死ぬのよ」となだめる。そして、マルセルが、レオはゲイなのと訊くと、「あなたは」と訊き返し、「ううん」の返事に「ガールフレンドいる?」。恥ずかし気に笑うマルセルに、「言いたくないでしょ? 知ったことかって」「レオの私生活だって、同じことなのよ」。こう言われて、マルセルも納得する。
  

翌日、レオは父の車でブレストへ。専門病院で数日検査入院し、山ほど薬をもらって話しながら家に戻る途中、父は急にいたたまれなくなり道路脇に車を停めレオを抱きしめる。レオは、「しばらく旅に出たい」と言い出す。「どこへ」。「訊かないで。会いたい人がいる。考えたいことも」。
  

レオの旅にマルセルも付いて行くことになった。しかし、ヴァンドーム広場に面した安ホテルに着くまで、マルセルは一言も口をきかない。「そんなすねてると、家に真っ直ぐ帰すぞ」「パリが好きかと思った」「なぜ、来たがったんだ」という兄に、マルセルは「真実を聞くまでは、何も話さない」と口を開く。「病気でしょ?」。「誰から聞いた?」「泣くな。悲しむことじゃない」。「何で 黙ってたの」。「まだ小さいから」。「分かった」。「俺はゲイだ。それでいいか」。泣くマルセル。
  

パリの街に出かけたレオは、エイズの薬を次から次へとセーヌ川に投げ捨て始める。「薬だよ」。「“病気じゃない” と思いたい」。「だけど、これで治るんでしょ?」。「講釈はいらん。手伝え」。あまりの事態に、マルセルはとっさに薬ビンの中身を口に空け、走り出す。慌てて後を追い、カプセルを吐き出させるレオ。「バカか?」。「死んじゃえ。嫌いだ」。胸に迫るシーンだ。
  
  

レオは、1年前まで付き合っていたゲイ友に会いに行く。実は、それがパリに来た理由だった。しかし、「突然現れて、よりを戻せだと」「無理な話だ。俺たちは終わってる」と言い渡され、レオは希望を失う。翌朝マルセルはレオに叩き起こされた。「出かけるぞ」「お前は汽車で家に帰るんだ」。「一人で?」。「俺はすることがある」。「一緒じゃなきゃ嫌だ」。「お前には発言権なんかない」。そして駅へ直行。あまりのことに反発して別れのキスも拒絶するマルセルに、レオはこう言葉をかけた。「期待してるぞ」「もう以前のお前じゃない」「家族と仲良くやれ」「みんなをがっかりさせるな」。遺言とも思われるこの言葉に、マルセルは怒りも忘れて涙する。
  

映画は、ここで終わっても良かったが、最後に、レオの埋葬のシーンが挿入される。ここでも、墓地に連れて行ってもらえず、塀の外から見るマルセルの姿。家族との仲はこれからうまくいくのだろうかと一抹の不安がよぎるエンディングだ。
  

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